「夜勤は2時間くらい仮眠できることになってる」
そう聞いて、
「じゃあ夜勤中にちゃんと寝られるんだ」
と思ったことはありませんか?
でも、夜勤を経験したことがある人なら、たぶん分かる。
2時間の「仮眠時間」があることと、2時間眠れることは全然違う。
仮眠室に入っても、なかなか寝付けない。
やっと眠れたと思ったら、急変対応や緊急入院等…。
「○○さん、ちょっと手が足りない!」
と呼ばれる。
ピッチを持ったまま、
「鳴りませんように……」
と思いながら目を閉じる。
そして気づいたら、もう起きる時間。
「私、寝た?」
これ、夜勤をしている看護師なら一度は経験があるのではないでしょうか。
私自身、2交替勤務をしていたときは、0~2時、2~4時、4~6時というように、スタッフで仮眠を回していました。
その前には30~45分ほど夕食を取る時間がありました。
時間だけを見れば、
「ちゃんと休めそう」
に見えるんですよね。
でも実際には、そう簡単ではありませんでした。
今回は、
「夜勤中の仮眠は2時間」という目安はどこから来ているのか?
そして、
実際の看護師はどれくらい休めているのか?
を、最新の調査データと看護師の夜勤に関する研究から見ていきます。
「2時間仮眠」はどこから?
まず、ここは誤解しやすいところです。
「看護師の夜勤は2時間仮眠を取らなければならない」という法律上の一律基準があるわけではありません。
日本看護協会の「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」では、夜勤中の負担を減らすための個人向けの対策として、
「夜勤中の仮眠は2時間確保」
という考え方が示されています。
また、2025年に実施された日本看護協会の調査を見ると、実際に2交代制の病院では、規程上の休憩・仮眠時間が「120~150分未満」とされているケースが最も多くなっています。
2025年の調査では、病院勤務の正規雇用・フルタイム・非管理職のうち、夜勤中の休憩・仮眠時間について規程があると回答した人は85.8%でした。
2交代制では、次のような結果になっています。
| 規程上の休憩・仮眠時間 | 割合 |
|---|---|
| 60分未満 | 0.9% |
| 60~90分未満 | 9.7% |
| 90~120分未満 | 23.4% |
| 120~150分未満 | 45.7% |
| 150分以上 | 18.8% |
平均は116.7分でした。
つまり、
2交代制では「約2時間前後の休憩・仮眠時間」が設定されている職場が多い。
これはデータからも確認できます。
でも、ここからが今回の記事で一番見てほしいところです。
規程上2時間でも、実際はどう?
同じ2025年の日本看護協会調査では、
「2025年9月の夜勤で、実際に取った休憩時間はどれくらいだったか」
も調べています。
結果はこちらです。
| 2交代制で実際に取った時間 | 割合 |
|---|---|
| 60分未満 | 7.0% |
| 60~90分未満 | 18.6% |
| 90~120分未満 | 32.9% |
| 120~150分未満 | 23.8% |
| 150~180分未満 | 10.1% |
| 180分以上 | 5.8% |
最も多かったのは、
90~120分未満。
「120~150分未満」は23.8%でした。
ここを比べると、かなり興味深いことが分かります。
規程と実際の違い
| 最も多かった時間 | |
|---|---|
| 規程上 | 120~150分未満 |
| 実際 | 90~120分未満 |
つまり、
「2時間くらい休める予定」と「実際に2時間休める」は同じではない。
もちろん、この調査でいう「休憩時間」には仮眠時間も含まれています。
そのため、
「120分休憩がある=120分眠れている」
という意味でもありません。
ここは非常に大事です。
「2時間ある」のに眠れない理由
じゃあ、なぜ仮眠時間が設定されていても、実際には眠れないのでしょうか。
ここは夜勤経験者なら、かなり共感してもらえると思います。
仮眠室に入ったからといって、すぐ眠れるわけではない
夜勤中は、
「はい、今から寝てください」
と言われても、身体が都合よく眠ってくれるとは限りません。
患者さんのことが頭に残っている。
次に何か起きるかもしれない。
ピッチを持っている。
「呼ばれたらどうしよう」と思う。
そんな状態で布団に入っても、
「眠らなきゃ」
と思うほど、逆に眠れない。
そして、やっとウトウトしてきた頃に、
「○○さんお願いします!」
となることも…仮眠してるから配慮してるのでほとんどないですけど
呼ばれるって事はよっぽどの事で、慌てて向かう
……ありますよね。
仮眠中も「完全に仕事から離れる」わけではない
夜勤中の仮眠で特徴的なのが、
「何かあれば呼ばれる」
という環境です。
もちろん病院や病棟によって体制は違います。
でも、急変や入院、転倒、患者さんの状態変化などが起きれば、予定していた仮眠が中断されることがあります。
だから夜勤中の仮眠は、
「自宅で2時間ぐっすり眠る」のとは条件が違います。
私自身も、
「寝ている間に何かあったら起こされる」
という前提でピッチを持ったまま仮眠室に入っていました。
これって、考えてみれば当然ですが、
身体は横になっていても、頭のどこかでは仕事から完全に離れられていない。
そんな状態なんですよね。
それでも仮眠は取ったほうがいい?
ここも、
「じゃあ仮眠なんて意味ないじゃん」
とはならないところです。
むしろ、研究では夜勤中の仮眠には意味があると考えられています。
厚生労働省の研究成果データベースに掲載されている看護師の交代勤務に関する研究では、2交代・16時間夜勤において約2時間の仮眠が確保されていたことなどが、夜勤後の疲労に関連している可能性が示されています。
また、過去の厚生労働科学研究では、2時間仮眠では1時間仮眠より徐波睡眠が多かったことなども報告されています。
さらに、看護職の夜勤中の仮眠についてまとめた研究では、仮眠が健康や精神運動性の警戒・パフォーマンスに有益である可能性が示されています。
つまり、
「どうせ途中で起こされるから寝ても意味がない」
ではありません。
眠れる環境があるなら、仮眠を取ることには意味があります。
ただし、
「2時間の仮眠時間がある=2時間しっかり眠れる」
ではない。
この違いが、今回調べていてすごく大事だと感じました。
看護師の眠気は夜勤のどの時間に強い?
ここでも興味深い研究があります。
病棟で働く看護師54名を対象に、4週間の勤務中の眠気を記録した研究では、夜勤帯で眠気の訴えが多く、特に眠気のピークは深夜勤帯の3~5時頃にみられました。
2交代制の夜勤では、夜勤82回のうち68.3%でKSS値6点以上の眠気が報告されています。
さらに、眠気のピーク時刻は、2交代制夜勤で2~4時頃に多くみられました。
これは、先ほどの仮眠の話ともつながります。
例えば、
| 時間帯 | イメージ |
|---|---|
| 0~2時 | 仮眠するスタッフ |
| 2~4時 | 別のスタッフが仮眠 |
| 4~6時 | 朝の業務が増える |
という勤務体制だったとします。
すると、
眠気が強くなりやすい時間帯に仮眠を取る人もいれば、起きて勤務している人もいる。
そして、仮眠から起きた直後に眠気が残ることもあります。
夜勤って、やっぱり単純ではないんですよね。
「仮眠時間」と「睡眠時間」は分けて考えたい
ここは今回の記事で一番伝えたい部分です。
例えば、
「夜勤中に2時間休憩があります」
と聞いたとします。
でも、その2時間の中には、
- 仮眠室まで移動する時間
- 着替えや準備
- トイレ
- 水分補給
- 寝付くまでの時間
- 途中で起こされる時間
- 目覚ましが鳴ってから起きる時間
- 再び病棟に戻る時間
などが含まれることがあります。
だから、
「休憩時間120分」と「睡眠120分」は違う。
これは当たり前のようで、夜勤中には忘れられやすい部分ではないでしょうか。
日本看護協会の調査から見える「現実」
今回、個人的に一番興味深かったのがここでした。
2025年の日本看護協会調査では、2交代制の規程上の休憩・仮眠時間は「120~150分未満」が45.7%で最多。
ところが、実際に取った休憩時間は「90~120分未満」が32.9%で最多。
「120~150分未満」は23.8%でした。
数字だけを見ると、
「それでも90分以上取れてる人が多いじゃん」
と思うかもしれません。
でも、ここで忘れてはいけないのが、
この数字は「眠れた時間」ではなく、「実際に取った休憩時間」です。
つまり、
「実際に90~120分休憩を取った」
という人が32.9%いたとしても、その時間すべて眠れていたとは限りません。
ここに、
- 寝付けない
- 途中で呼ばれる
- 急変で起こされる
- ピッチを持ったまま寝る
という現場の事情が入ってきます。
「仮眠できる職場」と「仮眠しやすい職場」は違う
これも夜勤を選ぶときには、結構大事な視点だと思います。
求人票を見ると、
「休憩○時間」
と書かれていることがあります。
でも、それだけでは分からないことがあります。
| 確認したいこと | 実際に知りたいこと |
|---|---|
| 仮眠時間 | 何分設定されている? |
| 仮眠室 | 個室?共有? |
| 仮眠中 | 呼び出されることはある? |
| 人員配置 | 仮眠中のフォロー体制は? |
| 夜勤人数 | 何人で夜勤する? |
| 急変時 | 仮眠者を起こす運用? |
| 実際の取得時間 | 予定どおり休めている? |
同じ「2時間仮眠あり」でも、実際の働きやすさはかなり違う可能性があります。
だから、もし転職を考えているなら、
「仮眠時間は何時間ですか?」だけではなく、「実際にはどれくらい取れていますか?」
と聞いてみるのも大切だと思います。
私が夜勤をしていた頃はどうだったか
ここは少し個人的な話になります。
私が2交替勤務をしていた頃は、0~2時、2~4時、4~6時というように、スタッフで順番に仮眠を取っていました。
その前に、30~45分程度の夕食時間。
時間だけ聞けば、
「結構ちゃんと休めるじゃん」
と思うかもしれません。
でも実際は、
仮眠室に入る
↓
なかなか寝付けない
↓
やっとウトウトする
↓
ピッチが鳴る
↓
呼ばれる
↓
病棟へ戻る
↓
対応する
↓
また仮眠室へ戻る
なんてこともありました。
そして何より、
「いつ呼ばれるか分からない」
という状態で寝ることになる。
あれは普通の睡眠とは、やっぱり違います。
だから私は、今回調べるまで、
「2時間仮眠できる勤務だった」
と思っていました。
でも、正確には、
「2時間の仮眠時間が設定されていた」
なんですよね。
この2つは、似ているようで全然違います。
仮眠の「時間」だけで夜勤を判断しない
夜勤をしていると、
「仮眠が2時間あるから大丈夫」
「うちの病院は仮眠が3時間あるから恵まれている」
と考えがちです。
もちろん、仮眠時間が長いことは大切です。
でも、それだけでは十分ではありません。
今回の調査や研究を見ていると、
「どれくらいの時間が設定されているか」
だけではなく、
「実際にどれくらい休めるのか」
まで考えたほうがいいと感じます。
特に、
- 夜勤人数
- 患者数
- 急変の頻度
- 仮眠中のフォロー体制
- 仮眠室の環境
- 休憩時間の取り方
- 夜勤明けの勤務
などによって、同じ2時間でも体感は変わります。
夜勤を続けるなら「仮眠の質」も見てほしい
夜勤は、
「何回夜勤に入るか」
だけでなく、
「夜勤中にどれだけ回復できるか」
も大切です。
日本看護協会の2025年調査では、「夜勤中に十分な休憩・仮眠が確保できること」は、看護職が夜勤を続けるための条件の一つとして35.6%から挙げられています。
つまり、仮眠は単なる「休憩」ではなく、
夜勤を続けられるかどうかにも関係する条件
として看護職自身からも見られているわけです。
それでも「夜勤がつらい」と感じたら
ここまで読んで、
「仮眠がちゃんと取れれば、まだ夜勤を続けられるかも」
と思う人もいるかもしれません。
反対に、
「そもそも夜勤をしていること自体がしんどい」
という人もいると思います。
夜勤がつらいと感じたとき、
「看護師なんだから夜勤くらいできないと」
と考えてしまう人もいるかもしれません。
でも、私はそこまで自分を追い込まなくてもいいと思っています。
夜勤が合う人もいれば、合わない人もいる。
夜勤手当を含めた給料を優先したい人もいれば、睡眠や生活リズムを優先したい人もいる。
大切なのは、
「自分にとって、今の働き方が無理なく続けられるか」
ではないでしょうか。
もし夜勤の負担が大きいなら、
- 日勤のみ
- 外来
- クリニック
- 訪問看護
- 健診
- 施設
- 企業など
夜勤のない、あるいは夜勤回数を減らせる働き方もあります。
「夜勤を辞める=給料を大きく下げる」と決めつけるのではなく、
夜勤なしでどれくらいの給与になるのか
を実際に求人で比較してみるだけでも、自分の選択肢が見えやすくなると思います。
医療職の給料は、勤務先や経験年数、勤務形態、手当などによっても変わります。
今の給料が自分の働き方に見合っているのか気になったときは、ほかの職場の給与や勤務条件と比較してみるのも一つの方法です。
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まとめ|2時間の仮眠があっても「2時間眠れる」とは限らない
今回調べて、一番印象に残ったのは、
「仮眠時間の設定」と「実際に取れた休憩時間」に差があること。
そして、
「休憩時間」と「実際に眠れた時間」はさらに違うこと。
でした。
2025年の日本看護協会調査では、2交代制の規程上の休憩・仮眠時間は「120~150分未満」が45.7%で最多。
一方、実際に取った休憩時間は「90~120分未満」が32.9%で最多でした。
また、日本看護協会は夜勤中の仮眠を2時間確保することを、夜勤・交代制勤務の負担を減らすためのヒントとして示しています。
だから、
「2時間仮眠できる勤務」
と書かれていても、
「じゃあ2時間ぐっすり寝られるんだ」
とは考えないほうがいい。
仮眠室の環境、夜勤人数、急変時の対応、実際の休憩取得状況などによって、夜勤の負担は変わります。
夜勤の求人を見るときも、
「仮眠は何時間ありますか?」だけではなく、「実際にはどれくらい取れていますか?」
まで確認してみてください。
夜勤を続けるために必要なのは、単純に「2時間」という数字だけではないのかもしれません。
そしてもし、
「仮眠を取っても夜勤明けが本当にしんどい」
「夜勤のたびに生活リズムが崩れる」
「そろそろ夜勤のない働き方を考えたい」
と感じているなら、
夜勤を続けることだけを前提にしなくてもいい。
自分の身体と生活に合う働き方を探すことも、看護師として長く働くための一つの選択肢だと思います。
参考にした主な文献と思い
日本看護協会「2025年 看護職員実態調査報告書」
2025年9月の夜勤における規程上の休憩・仮眠時間と、実際に取得した休憩時間を調査しています。今回の記事では特にこの資料を中心に使用しています。
日本看護協会「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」
夜勤・交代制勤務の負担軽減策として、夜勤中の仮眠2時間確保などを提示しています。
日本看護科学会誌「病棟で勤務する看護師が交替勤務中に感じる眠気と眠気のピーク時刻の実態」
2交替・3交替勤務の看護師54名を対象に、勤務中の眠気を調査。夜勤帯では深夜~早朝に眠気が強くなり、2交替夜勤では2~4時頃にピークがみられました。
労働安全衛生総合研究所「交替制勤務看護師の勤務間インターバルと疲労回復に関する研究」
12時間・16時間夜勤の看護師を対象に、勤務間インターバルや疲労回復を調査。16時間夜勤では約2時間の仮眠が確保されていたことなどが報告されています。
厚生労働科学研究「看護職の夜勤中の仮眠に関する研究」
看護職の夜勤中の仮眠について検討し、仮眠が健康や精神運動性の警戒・パフォーマンスに有益である可能性などを報告しています。
本記事では、「看護師は夜勤中に必ず2時間仮眠を取らなければならない」という意味で「2時間仮眠」を紹介しているわけではありません。
勤務先によって休憩・仮眠の規程や取得方法は異なります。
また、日本看護協会の調査でいう「実際に取った休憩時間」は、実際に眠れた時間そのものではありません。
そのため、
「規程上2時間ある=2時間眠れる」
とは限らないことに注意してください。
この記事では、公開されている調査・研究から分かることと、筆者自身の夜勤経験を分けて紹介しています。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
給料や働き方についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
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